ドワンゴの川上会長が宮﨑駿にフルボッコにされるのを見て思ったこと(まじめな記事ですよ)
本当は今日は
スクービーのライブに行きました。
狂ったように踊って楽しかったです、イェイ!!
的な記事を書くはずでした。
それもこんな夜中にではなく、明日の夜にゆっくりと。
でも。
さっき再放送でこれを見てしまった。
思ったことを書き留めておかないといけないという気持ちに、久しぶりになってしまった。
だって、こんなに気持ちの悪い思いをしたのは本当に久しぶりだったんだ。
2013年に長編映画の製作からの引退を表明した宮﨑駿監督。
彼が三鷹の森ジブリ博物館で上映する短編映画を作る姿と、引退を表明してからの2年に密着した物語です。
手描きのアニメーションにずっとこだわってきた彼が、自分の作品にCGを取り入れることを決め、その中でもどかしさと苦悩に満ちた時間を過ごす中、宮﨑監督の目の前に現れたのがドワンゴの川上会長。
川上会長は
「面白いものができると思って」
と言って、人工知能を持つCGのアニメーションをプレゼンしにやってくる。
彼が宮﨑監督に見せたのは、頭を支点に死して地面をはいずるように動くゾンビのアニメーション。
「痛覚も、頭が大事とかいう概念もなく、早く動くということだけを人工知能に学習させたからこういう人間では考えられないような動きをするんです。
これをゾンビゲームとかに使ったら面白いんじゃないかっていう話になっています」
そんなことを言ったかな。
なんしかにやにや笑ってて、とてもとても自信満々に見えて、わたしはその時点で果てしない違和感と嫌悪感を抱いてしまった。
それに対して、宮﨑監督はが返した言葉は、
「時々朝に会う、体に障がいのある友達がいるんです。
手の筋肉がこわばって、僕とハイタッチをすることすら大変なんです。
彼のことを思い出してしまって、僕はこれを面白いとは思えない。」
また、
「これを面白いという人は痛みとか何も考えないでやってるんでしょう。
それは生命に対する冒とくであって、きわめて不愉快だ。
やりたいなら勝手にやってくれればいい。」
生命に対する限りない賛歌と、あくなき好奇心と探求心に満ちた宮﨑監督の作品。
そのどこに、このゾンビと相いれる部分があるんだと、私でもそれはわかること。
厳しい言葉を投げかけられて、目を半ば宙に泳がせながら川上監督が放った言葉は、
「これはあくまで実験段階で…」
…的外れのプレゼンやってしまった新入社員か!!!
ここまでの流れは、結構まとめとかに書かれてるんですけど、わたしが一番びっくりして、やばいんじゃあないの、この世の中って思ったのがこの後。
追い打ちをかけるように鈴木プロデューサーが川上会長を筆頭にプレゼンにやってきたドワンゴの3人に問いかけます。
「で、どこを目指したいの?」
その答えが、
「人間が描くのと同じように絵を描く機械」
この言葉を聞いたときに私は本当に世も末だと思いました。
腱鞘炎になりながら、締め切りに追い立てられながらストーリーを考え、ギリギリと歯ぎしりをしながらコマを埋める漫画家や、現に今訪れているジブリという会社で血を吐くような思いをしながら作品を作っている人たちを全否定する言葉を平気で、表情一つ変えずに吐くことができるこの会社の人たちを心底恐ろしいと思ったし、そんなアニメーションやコミックスが世にはびこる時代になるのならば、わたしはきっともはやアニメも観ないし漫画も読まないだろう。
それにしても、彼らは何を思ってあの醜悪なゾンビをプレゼンに持ってきたんだろう。宮﨑駿というアニメーション監督の作品をきちんと観たことがあれば、その世界を少しでも理解できていれば、あんなものをプレゼンしないはず。
これはあくまで個人的な見解ですが、彼らは上から目線でプレゼンに臨んでいたんでしょう。
スタジオジブリと組んだ仕事をしました、となれば当然会社の評価は上がるだろうけれど、そのためにジブリという会社に合うものを持っていくということはしないし、こびることはしない。俺たちは俺たちの作ったものをジブリに見せる。
この考え方は決して悪いものではないと思います。
むしろ今を生きるビジネスパーソンとしては非常にまっとうな考え方だとも思う。
だけど。
日本のアニメーションの世界を、文字通り生命を削りながらけん引し続けた監督とプロデューサーに対してあまりにも失礼だし、失礼かもしれないということに思い至れない鈍感力は心底恐ろしい。
「地球最後の日が近い気がする」
そう、感想を語った宮﨑監督。
あの、醜悪でしかないプレゼンに触発されてという訳ではないんだろうけど、長編アニメーションの企画書を鈴木プロデューサーに渡します。
企画書には3年間のタイムスケジュールが書かれていて、
「3年後、小生は生きているカナ?」
と書かれていて、それがとても印象的でした。
宮﨑監督は今、75歳。
スケジュール通りにうまく運んだとしても、映画が完成するころには78歳。
それを考えると、この長編企画が実現するかどうかはまだわかりませんが、願わくば実現させてほしいと思います。
宮﨑監督が最後に言った言葉。
「(長編のことは)まだカミさんにも言ってない。
死んでもいいからやりきる覚悟でやる、って言って許しを請うしかないんだろうな」
そんな思いのこもった、血の通ったアニメーションを観たいと、私はそう思います。